訪問、有難うございます。
「心の風」に誘われて、
思うがままに書き綴る「旅する生命科学者Nagoya」です。
(いらすとやのHPから拝借)
今回は、
専門外の人が科学・医療系の論文や記事を読むときに気を付けておきたいことを紹介したいと思います。
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- 信頼出来る最新の情報は、学術論文にあり
- 新型コロナウイルスに関する論文が、1年間で87852報発表されました
- 学術論文も、ピンからキリまで…。
- 科学・医療系の学術論文を読むときにチェックしたい「論文の質と研究者の貢献度を反映する数値」
- まとめ
- あとがき
信頼出来る最新の情報は、学術論文にあり
インターネットを含めた情報網が発達した現在、「がん」や「難病」の情報は、従来よりも入手しやすくなっているよね。
「新型コロナウイルス(COVID-19)」の感染リスクや感染予防に繋がる情報が早く欲しい!!
信頼出来る情報を御願いしまーす。
以前の記事にも記した通り、医療系の情報は「ガイドライン」に記載されている情報が最も信頼できます。
うん、でも更新頻度がね…。
信頼出来る最新の情報を入手したいなら「学術論文」が一番じゃ。
「新型コロナウイルス(COVID-19)」に関する学術論文は、現在無料で公開されています。
アメリカ国立衛生研究所のアメリカ国立医学図書館が提供しているPubMedにインターネットでアクセスすることが出来れば、誰でも閲覧することが出来るぞ。
でも、英語でしょ?
そこは、頑張るのじゃ!!
そんな~。
新型コロナウイルスに関する論文が、1年間で87852報発表されました
2020年12月31日にキーワード「COVID-19」を用いて検索したところ、87852報の学術論文がPubMedでヒットしました。
87852報って、多いの?
生命科学史における主要な研究成果「iPS細胞」や「スタチン」と比較すると分かりやすいぞ。
- 「iPS細胞※1」に関する論文:開発された2006年からの14年間で約10000報
- 「スタチン※2」に関する論文:発見された1973年からの47年間で約59000報
※1:現京都大学教授の山中伸弥先生が開発した人工多能性幹細胞
※2:東京農工大学特別栄誉教授の遠藤章先生が発見・開発した動脈硬化治療薬
「新型コロナウイルス(COVID-19)」が発生してから1年と考えると、ムチャクチャ多いね。
1日あたり約240報の論文が発表されている計算になります。
1日に240報!!
これ、全部信頼していいの?
残念ながら、全ての論文が信頼できるとは限りません。
学術論文も、ピンからキリまで…。
学術論文は、多くの場合「査読」と呼ばれる審査を経て一般に公開されるぞ。
査読付の論文は、全て信用できるということ?
残念ながら、必ずしも「Yes」とは言えないかな。
架空の実験データを用いる研究者も、居るのじゃ。
ヒドい!!
ごく一握りの研究者だけどね。
架空のデータかどうかは、審査の段階で分からないの?
審査員の力量で見落とされる場合もあるんじゃが、超一流誌の審査に携わる研究者でも、架空のデータを見逃してしまうことがあるんじゃ。
実際、いくつかの捏造が、社会的にも大々的に問題視されています。
専門家にも分からないことがあるのだから、信頼できる論文かを専門外の人が判断するのは至難の業ね。
だったら、論文を発表した研究者が所属する組織・機関で判断するのは、どうなの?
日本で言えば「東京大学・京都大学=優秀」というイメージが定着しているけれど、研究に関しては、所属している組織・機関を参考にするのではなく、研究者個人を評価する必要があります。
東京大学や京都大学の研究者が必ずしも優秀ではないということ?
残念ながら、東京大学や京都大学から発表された論文の中にも捏造があります
日本を代表する大学に所属している研究者が不正をしているとなると、何を信じて良いか分からなくなる…。
そうじゃな、最後に信じることが出来るのは、自分じゃ。
研究者は皆、自分自身で論文を読んで、その価値を判断しています。
そんな~、論文読めないよ~。
論文を読まなくても論文の質を判断することができる数値があるので、専門外の人は、その数値を参考にすると良いぞ。
科学・医療系の学術論文を読むときにチェックしたい「論文の質と研究者の貢献度を反映する数値」
インパクトファクター(Impact Factor; IF)
「論文の質」を評価する際に古くから採用されているのが、学術誌に付与される「インパクトファクター(IF)」じゃ。
何それ?
簡単に説明すると、「質の良い論文が 、どの程度掲載されているのかを示す数値」が「インパクトファクター(IF)」です。
でも、インパクトファクター(IF)って、論文を収録している雑誌にたいする評価で、一つ一つの論文にたいする評価ではないよね?
鋭い…。
インパクトファクター(IF)は論文にたいする間接的な評価に過ぎんが、数値が高い雑誌に掲載されている論文は、一定の質が保証されていると考えることができるぞ。
「日本製」というだけで、商品が世界で一定の評価を受けるのと同じね。
うむ、ただし、あくまで目安じゃから「論文の被引用数」も調べた方が良いぞ。
被引用数??
論文に記された内容は、論文発表後も、新しい研究のために自分達・他の研究グループで活用されます。
その結果、「新たな研究の中で参考にされた論文」は、新たな研究結果がまとめられた論文の中で「参考文献」として引用・紹介されるのじゃ。
被引用数は、後の研究にどの程度の影響を及ぼしたかの指標になるということね。
論文を自分達で引用しまくることがあるんじゃない?
そ、そうだね。
最新の論文だと、どうしても被引用数が少なくなるから、「被引用数」は最新の論文の評価には向かないよね?
そ、そうだね。
「被引用数」だけでは様々な問題があるから、「研究者」を評価する数値も参考にするのが良いぞ。
h指数(h-index)
h指数は、論文の質と量の両方を定量化した数値じゃ。
「発表した論文のうち、引用された回数がh回以上であるものがh報以上あることを満たすような最大の数値」として定義されています。
- h指数が30である研究者=30回以上引用されている論文を30報以上発表している。(発表した論文のうち、31回以上引用されている論文は31報未満である。)
- 発表した論文のうち、10回以上引用されている論文が10報以上あり、11回以上引用されている論文が11報未満である研究者のh指数=10
ということは、100回以上引用されている論文を1報発表していても、他に論文を発表していなければ、h指数は「1」ということね。
うん、継続して研究に携わっていないと高いh指数が得られないから、その研究者の研究への貢献度の質と量を知る目安にすることが出来ます。
ドラゴンボールの「戦闘力」みたいな数値だね!!
ま、まぁね…。
i10指数(i10-index)
h指数の最大値は、発表した論文数です。
学位を取得したばかりの若手研究者の場合、どうしても数値が低くなるよね。
そうじゃ、だから、「i10指数」なる数値がある。
「10回以上引用された論文の数」を示すのがi10指数です。
これなら、若手研究者もしっかり評価できるね。
どうやって若手研究者かどうかを調べるの?
日本で研究している研究者であれば、「researchmap」で研究者の経歴を調べることができるます。
まとめ
学術論文や研究者を客観的に評価するためのシステムが整いつつあるが、専門外の人が科学・医学系の学術論文を読むときは、筆頭著者と責任著者の「インパクトファクター(IF)」・「被引用数」・「h指数」・「i10指数」をチェックすると良いぞ。
筆頭著者(ファーストオーサー、first author、第1筆者)
- 学術論文の執筆および当該研究において中心的な役割を担った者(学術論文の著者欄の先頭に名前がある者)
責任著者(コレスポンディングオーサー、corresponding author、連絡著者)
- 学術論文の執筆および当該研究において責任を持つ者(学術論文の著者欄の先頭もしくは最後に名前がある者であることが多い)
インパクトファクター(IF)
論文が掲載されている雑誌の影響度を示す数値
※個々の論文の影響度を示していないので要注意
被引用数
論文が他の論文中で引用された回数を示す数値
※最新の論文は数値が低くなる傾向があるので要注意
h指数
影響度が高い論文を発表している目安になる数値
※発表論文の総数が少ない場合(若手研究者等)、低くなる傾向があるので要注意
i10指数
一定の影響を与えた論文の数の目安になる数値
※影響度が極めて高い論文の有無が分からないので要注意
発表から5年以上経過した論文については、「被引用数」を調べて「論文の質」を評価すると良いと思います。
良い論文の目安は?
個人的には、「被引用数」が年間4回以上であれば「良い論文(貢献度が高い論文)」と考えています。
研究者を評価する場合には、「h指数」と「i10指数」を合わせて評価すると良いぞ。
論文や研究者を評価する時にオススメの無料サイト
- 日本で研究している研究者が登録されています。
※研究者自身が登録する必要があるため、登録されていない研究者がいる可能性有り。
- 論文の「被引用数」や研究者の「h指数」と「i10指数」が登録されています。
※「被引用数」は全ての論文について検索可能であるが、「h指数」と「i10指数」については研究者自身がGoogle Scholarに登録している必要があるため検索出来ない場合も有り。
- 世界中の研究者が登録されています。
※研究者自身が登録する必要があるため、登録されていない研究者がいる可能性有り。
あとがき
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